関節リウマチの治療の流れとは?リウマチ専門医が解説
早期診断 早期治療は大前提
関節リウマチとは
関節リウマチ(かんせつリウマチ、rheumatoid arthritis)は自己免疫疾患の一つで、膠原病の1種でもあります。
手や手関節、足の関節を中心に、痛みや関節の腫脹、骨変形や骨破壊を起こし、慢性的な関節の炎症が続く特徴がある病気です。
関節リウマチの原因と発症
関節リウマチの発症原因は未だに明確になっていませんが、遺伝的要因、環境要因、免疫系の異常反応などが関わっていることはわかってきています。
最近では、口内細菌や腸内フローラの変化なども発症の要因の1つとして考えられています。
関節リウマチの発症
関節リウマチと滑膜
関節内には関節を覆っている滑膜という組織があります。滑膜の役割は関節内の軟骨保護のための潤滑液(関節液、滑液)の生成をしています。
関節リウマチの場合、この滑膜から炎症が始まり、軟骨や骨へと炎症が広がっていきます。骨を溶かす細胞も活性化してしまうので、ひどくなると軟骨や骨が溶けてしまい関節の変形に繋がっていきます。
関節リウマチの症状
多くの患者さんの初期症状は、関節のこわばりです。朝の動き始めや休息後に症状を感じることが多いようです。関節リウマチの症状は、関節の痛みや腫れだけでなく、関節の変形や機能の制限、全身症状(疲労感、発熱、全身のだるさなど)も引き起こすことがあります。
関節リウマチの診断
関節リウマチの診断は、関節の腫れや熱感、可動域を確認する身体診察、血液検査、画像検査などの検査結果や症状の総合的な評価に基づいて診断されます。
2010年のアメリカリウマチ学会(ACR)/欧州リウマチ学会(EULAR)の分類基準(2010 ACR/EULAR classification criteria for rheumatoid arthritis):この分類では、関節リウマチの診断に必要な項目が定義されています。
少なくとも1箇所以上が腫れている、その腫れが他の病気で説明できないときに以下の4つの項目をスコア化し、関節リウマチであると判断しています。
- 関節の炎症が少なくとも6週間以上続いている。
- 他の疾患による関節炎が除外されている。
- 血液検査でリウマトイド因子(RF)または抗CCP抗体(anti-CCP抗体)の陽性が確認されている。
- 関節リウマチの特徴的な所見(関節の腫れ、関節の痛み、関節の可動性の低下など)が少なくとも1つ以上ある
あくまで分類基準ですので、総合的な判断は主治医が行います。
抗CCP抗体陽性の場合
抗CCP抗体陽性の患者さんは、関節リウマチ発症の可能性が高いことがわかっていますので、現症状が軽くても注意深く観察していきます。
関節リウマチの治療
治療の目標は、日常生活に支障なく痛みのない生活を送ることです。
また、早期発見・早期治療は大前提です。
MTXなどの薬物療法や生物学的製剤、JAK阻害薬の登場により、リウマチ治療や患者さんの予後が大きく変わりました。
治療のタイミングを間違えなければ、寛解(ドラッグフリー)を目指すことができます。
前述の通り、慢性的な炎症が続く病気なので、長期的な治療が必要になってきます。
安心して通院していただけるように、体調変化のご相談や治療内容のご相談はいつでも受付けています。
関節リウマチの治療薬
MTX メトトレキサート
MTX(メトトレキサート)は、リウマチ治療において第一選択となる薬です。MTXは炎症を抑制し、関節破壊を防ぎ症状の進行を抑える役割があります。
単剤での使用もありますが、他剤、生物学的製剤と併用することで相乗効果があることが確認されています。
MTXは経口剤または皮下注射薬を使用します。投与方法、投与量や投与間隔は、患者さんの症状や薬の耐容性に基づいて調整しています。
皮下注射薬名はメトジェクトです。週一回の皮下注射をします。経口剤に比べ胃腸障害が起きにくいと言われています。
MTX投与中は、避妊が必要です。お子様をお考えの場合は、ご相談ください。別のリウマチ治療をご提示致します。
副作用は個人ごとで異なりますが、一般的に吐き気や口内炎や脱毛、胃腸障害や肝機能障害などが挙げられます。また、免疫が若干下がるため感染症に注意が必要です。
副作用の有無や感染症対策は定期的にチェックしていきます。
薬の服用前には、看護師が詳しく薬の説明や服薬指導を行います。わからないこと、不安なことはご相談ください。
メトジェクト
現在はメトトレキサートの皮下注射薬:メトジェクトも登場しています。自己注射も可能で、シリンジタイプとペンタイプがあります。効果は服用タイプと同等の有用性があり、消化管障害が少ないと言われています。
葉酸 フォリアミン
葉酸(フォリアミン)は、MTXによる副作用を軽減させるため服用していただきます。
葉酸は、細胞の成長と分裂に重要な役割をもっています。正常な細胞の維持にするために必要なビタミンの一種です。
MTX(メトトレキサート)は、葉酸の代謝を妨げるため、正常な細胞の維持が難しくなり副作用が出やすくなったり治療効果の低下を起こす可能性があります。そのため、MTX服用中はフォリアミン(葉酸)を処方します。
ただし、葉酸の取り過ぎはMTXの効果を弱めてしまうので、決められた量を摂取していただきます。
生物学的製剤 バイオ製剤
生物学的製剤の登場で、休薬や寛解の目標を持つことができるようになりました。現在は8剤の生物学的製剤を採用しています。
MTXだけではリウマチの疾患活動性を止められない場合、MTXと併用することで相乗効果が期待できるものもあります。
前述した滑膜の炎症には、何種類もの炎症性サイトカインという物質が放出されています。炎症細胞とくっつくことでさらに、炎症が広がっていきます。
この炎症性サイトカインと結びつき、炎症を広がらないようにする薬が生物学的製剤です。
注射薬となります。外来受診時に注射や点滴が必要です。または自己注射指導を受ければご自宅で自己注射が可能です。
良く効く薬ですが、感染症などの副作用や注射薬が高額であるなどのデメリットの部分もあります。感染予防対策、風邪を引いた時の対処方法やアフターフォローの体制は整っていますので、ご安心ください。
若干高価な薬ですが、品質の高いバイオシミラー製剤を使用することなどにより医療費を最小限にするよう努めています。
JAK阻害薬
JAK阻害薬は比較的新しいリウマチ治療薬となります。リウマチ治療以外にも使用されています。
生物学的製剤との違いは、サイトカイン(炎症物質)を放出する前の段階で、炎症を起こす細胞内の伝達経路を遮断する役割をもっています。簡単にいえば、生物学的製剤より更に根っこの部分に効きます。
「炎症を起こせ」という信号を伝えるJAKという酵素と結びつき、炎症を抑制します。
この薬剤は経口剤です。
免疫系に直接作用するので、帯状疱疹の発症には注意が必要です。こちらの薬を開始する場合は50歳以上の全員の方に帯状疱疹ワクチン接種を推奨しています。
JAK阻害薬を検討する場合は以下の通りです。
- メトトレキサートが効果不十分な場合
- 追加して投与する場合
- メトトレキサート+バイオ製剤で効果不十分な場合
- バイオ製剤とスイッチして使用することが多い
副作用チェック
本院では副作用チェックのため、定期的な血液検査を実施しています。
- 抗リウマチ剤開始後1年間は8週おき
- 1年以上経って安定したら10週おき
また、肺・頸椎・手足などのレントゲン検査は年に1回、肺炎や骨の破壊などが進んでいないかをチェックさせて頂いています。
関節リウマチの治療費
関節リウマチ治療は長期に及ぶので、治療費は気になるところです。
- 各薬剤の1か月費用例(2024.4薬価改定)
- MTXの場合 週10㎎×4週 約523円(3割負担)
- 生物学的製剤(エタネルセプト25mgBS)の場合 週1回1本×4週 約7,480円(3割負担)
- JAK阻害薬(オルミエント)の場合 毎日1錠2mg×4週 約19,320円(3割負担)
本院では、患者さんの病態にもよりますが、治療費削減に様々な提案をしています。
まずは、しっかりとした治療を行うこと。MTXや生物学的製剤を必要十分に投与し、関節の炎症を長引かせないで早期治療を行い症状が落ち着けば、通院回数や血液検査の回数を減らせます。併せて、オンライン診療により交通費も削減できます。
院内処方では、ジェネリック医薬品やバイオシミラー製剤を多く採用することで4割程度削減できるものもあります。
高額医療費など医療費支援制度やそれ以外の傷病手当や身体障害者手帳などの作成サポートも積極的にしています。
クリニック案内
本院は初診完全予約制です。
電話でのお問い合わせ
TEL.045-577-4623
受付時間 / 午前 10:00 - 13:00 午後 14:30 - 17:00
- クリニック名
- シーズンズ神奈川リウマチクリニック
- 所在地
- 神奈川県横浜市港北区新横浜2丁目4−17
新横浜千歳観光第2ビル 7階
(1F東急リバブル) - 電話番号
- 045-577-4623
- seasons.kanagawa@gmail.com
または
お問い合わせフォーム - 管理責任者
- 天本 藤緒
- 開院日
- 2023年7月1日
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- 東京リウマチクリニック
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