
メトトレキサート(もしくはリウマトレックス)だけでは、炎症や痛みを取り切れていないので、生物学的製剤を使いましょう。

関節リウマチの治療で、生物学的製剤を使っています。
こんな声を聞いたことはありませんか?
セイブツガクテキセイザイ、初めて聞く言葉に戸惑っている方も少なくないと思います。
でも実は、関節リウマチの治療を受けていくうえで、強い味方になってくれる、とても頼もしい存在なんです。
今回は、生物学的製剤についてお話ししていきますよー!

まず、生物学的製剤とはなにか、と言いますと。
バイオテクノロジー(遺伝子組み換え技術や細胞培養技術など)を使って作られた薬剤、のことを意味します。
バイオ製剤、と呼ばれることもありますよ。

生物が作り出すタンパク質などの有効成分を利用しているため、化学的につくられたお薬とは違い、より生体に近い形で作用します。

生物学的製剤は、関節リウマチだけが適応ではありません。
関節リウマチのほかに、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、クローン病・潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎、喘息、骨粗しょう症など、多くの疾患に適応されます
*乾癬性関節炎:乾癬(かんせん)という皮膚の病気に、関節の腫れや痛みが伴う状態。
*強直性脊椎炎:仙腸関節(腰と骨盤間にある関節)、腰、背骨、手足の関節などにある人体の付着部(筋肉が骨につく部分)に炎症が起きる疾患。
*クローン病:消化管前谷炎症や潰瘍ができる慢性の炎症腸疾患。
*潰瘍性大腸炎:大腸の粘膜に炎症が起こり、びらん(皮膚や粘膜の表面が傷ついて、下の組織が露出した状態)や潰瘍ができる慢性の炎症腸疾患。
ではなぜ、関節リウマチの治療で物学的製剤を使うのか、と言いますと。
関節リウマチの第一選択薬であるメトトレキサート(もしくはリウマトレックス)はご存じの方も多いかと思います。

メトトレキサートは、身体の中の葉酸の代謝を抑え、免疫を下げることで、関節リウマチの炎症を抑えてくれます。
生物学的製剤はサイトカインやT細胞の働きを抑える役割を持ち、メトトレキサートとは違う作用機序を持つ、ということになります。
そのため、メトトレキサートだけでは抑えきれない炎症を下げることが期待できるものになります。
炎症を下げることで、痛みや腫れが落ち着くこともありますよ!
*サイトカイン:免疫細胞から分泌されるタンパク質で、細胞間の情報伝達を行う役割を持つ。侵入した病原体に応答して、免疫細胞を刺激し、増殖などを行う。
*T細胞:免疫細胞を司るリンパ球の一種。病原体や異常細胞を認識・公言し、排除する役割を担う。
関節リウマチで適応となる生物学的製剤の薬は、主に2種類あります。
- サイトカインの一種であるTNFやIL-6をターゲットとして、抑える役割を担う薬剤。
- 免疫異常を引き起こしているT細胞を抑える役割をする薬剤。
そして現在、関節リウマチで使われている生物学的製剤は、全部で9つあります。
・TNF阻害剤:レミケード、ヒュミラ、シンポニー、シムジア、ナノゾラ、エンブレル
・IL-6阻害薬:アクテムラ、ケブザラ
・T細胞共刺激分子調節薬:オレンシア
*すべて商品名になります。

じゃあ、自分にはどの生物学的製剤が合っているの?
どの生物学的製剤が合うかは、やってみないと分からない、というのが正直なところです。
1回で劇的に効果がある患者さんもいれば、数カ月経てようやく効果が出てきた、という患者さんもいます。
また、ある程度の期間、生物学的製剤を使用して、効果がないと医師が判断すると、違う生物学的製剤に切り替える、という流れになることが多いです。
中には、
- メトトレキサートのみで痛みをコントロールできる場合
- メトトレキサート+生物学的製剤で痛くなくなる場合
- 生物学的製剤のみで痛くなくなる場合
というパターンもあります。

さて、ここまでお話していると、やはり気になるのは、副作用のことではないでしょうか。
先ほどもお伝えしたように、生物学的製剤は生物が作り出すタンパク質などの有効成分を利用しているため、肝臓や腎臓への負担はほとんどない、と言われています。
ただ、免疫を下げる効果があるため、最も注意しなければいけない副作用は、感染症になります。

感染症と一言で言っても、いろいろなタイプの感染症があります。
内臓系の感染症としては、肺炎、腎盂腎炎、腸管への感染症。
ほかにも皮膚の感染症である蜂窩織炎・帯状疱疹などが挙げられます。

もちろん必ずしも感染症にかかるというわけではありませんので、ご安心をくださいね。
ですが、感染症になりやすい状態になりますので、注意していく必要があります。
ですので、治療前もしくは治療中に定期的に血液検査、レントゲンなどを行い、感染症の有無やリスクなどの評価を行うことが多くあります。

いかがでしたか?
生物学的製剤は、患者さんの生活を支えるための頼もしい味方になってくれます。
生物学的製剤を使用することへの不安があれば、かかりつけ医にご相談してみてくださいねー!
