日本人の2人に1人が悪性腫瘍(がん)になる時代、男女ともに死因の1位は悪性腫瘍です。
罹患数としては、女性では乳がん、大腸がん、肺がんの順に多く、男性では前立腺がん、大腸がん、胃がんの順に多くなっています。(全国がん登録罹患データ2019 下図)
関節リウマチはがんになりやすいのか
関節リウマチは免疫の異常ということは、がんとも関係があるのでしょうか、という質問を受けることがあります。
あるメタアナリシスでは、悪性腫瘍全体のリスクは一般集団と変わりませんでした。
悪性リンパ腫のリスクは一般集団よりも2倍増加します。
特にRF(リウマチ因子)が高い方、活動性の高い方がリスクは高いと報告されています。
肺がんのリスクも1.63倍増加します。
大腸がん、乳がんのリスクはそれぞれ0.77倍、0.84倍と一般集団よりも減少していました。
成人関節リウマチ患者における悪性腫瘍の発生率に関するメタ分析
A meta-analysis of the incidence of malignancy in adult patients with rheumatoid arthritis. Arthritis Res Ther. 2008;10(2):R45.
悪性リンパ腫とリウマチ
悪性リンパ腫は、血液のがんともいわれます。夜間の発熱、寝汗、リンパ節の腫れが典型的な症状です。
メトトレキサートの副作用として、リンパ腫が起こる、メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患という病気もあり、メトトレキサート内服を中止すると退縮することがあるのがわかっています。
しかし、ウイルスとの関連や他の薬剤治療中にも発症することなど、まだ不明点が多い疾患です。
リンパ節が腫れているのに気づいたら、担当医にお知らせください。
肺がんとリウマチ
共通する原因として喫煙が挙げられます。喫煙は肺がんの最大のリスクであり、リウマチの発症原因のひとつでもあります。肺がん予防のためにも、リウマチの治療をより効果的にするためにも、禁煙は重要です。
生物学的製剤と悪性腫瘍
日本の関節リウマチ患者における、生物学的製剤投与時の悪性腫瘍発症率は、一般集団と変わらないことが報告されています。
悪性リンパ腫のみ、一般集団よりもリスクが高くなる可能性が示されています。
生物学的疾患修飾性抗リウマチ薬で治療を受けた関節リウマチ患者における悪性腫瘍のリスクと一般集団との比較:日本の全国コホート研究
Risk for malignancy in rheumatoid arthritis patients treated with biological disease-modifying antirheumatic drugs compared to the general population: A nationwide cohort study in Japan. Mod Rheumatol. 2016 Sep;26(5):642-50
悪性腫瘍の対策
リスクを下げること(禁煙など)と、早期発見が重要です。
普段の診察や採血では、悪性腫瘍の初期症状を見つけることは困難です。
がんの早期発見のため、「がん検診」をしっかり受けるようにしましょう。