関節リウマチの診断と治療に必要な血液検査項目:リウマトイド因子・抗CCP抗体・CRP
アメリカや欧州リウマチ学会でもリウマチ診断項目として挙げているリウマチ因子、抗CCP抗体にプラスして関節の炎症を見るCRPの3つは特に必要な血液検査といえます。
リウマトイド因子(=リウマチ因子=RF)
リウマトイド因子(RF:rheumatoid factor:以下、リウマチ因子)は、最も一般的な関節リウマチの血液検査です。リウマチ因子は自己免疫反応によって体内で産生される抗体(免疫グロブリンの一つであるIgGに対する抗体)で、関節リウマチ患者さんの約80%が陽性となります。
血液検査に出ないリウマチもある
関節リウマチの患者さんでも陽性に出ない方もいらっしゃいます。
「血清陰性関節リウマチ」と呼びます。
リウマチと診断できるような強い関節の症状はないものの、リウマ因子が正常の15を超えて若干高いと言うような患者さんが大勢いらっしゃいます。
リウマチという病気は白黒ではなく、間のグレイエリアが大きいため、 そういった患者さんをまとめて「リウマチ体質」と呼んでいます。
リウマチ因子の数値だけで、関節リウマチと診断することはできません。この数字に加えてはっきりした関節の症状が揃うことがポイントになります。
健診のリウマチ反応で陽性と判定された方は、一度リウマチ専門医にご相談ください。
リウマチ因子の役割
リウマチ因子は診断時にしか調べないことが多いようですが、実際には治療開始した後も有用な検査です。
例えば、CRP が上がった場合にそれが感染症などの副作用によるものか、リウマチのフレアアップによるものか、の判別に役立ちます。
CRPとともに リウマチ因子も比例して上昇していれば、リウマチのフレアアップの確率が高くなります。
リウマチのフレア
急激なリウマチ症状の悪化を表す言葉です
リウマチという病気は必ずアップダウンがあります。CRPが正常範囲に落ち着いた後でもリウマチの大きな病気の勢いがリウマチ因子の数字の上下と比例することが多いため、本院では定期的に調べることが多いです。
治療効果の判定にもかなり有用で、例えばMTXをさらに増やすべきかという判断時にこのリウマチ因子の数字を参考にします。
リウマチ因子の正常数値
本院の正常値:15以下
抗CCP抗体
抗CCP抗体(抗環状シトルリン化ペプチド)は、リウマチの早期診断や予後予測に重要な項目です。
抗CCP抗体が陽性だった場合、80%以上の確率で数年以内(数カ月~5年程度)に関節リウマチを発症することが分かっています。また、治療が遅れると1-3年以内に関節の変形が進行しやすいこともわかっています。
抗CCP抗体陽性のリウマチは、MTXや生物学的製剤を早め早めに投与することが重要です。また、むしろ薬が効く確率が非常に高いので治療はやりやすいというのが私たち専門医の本音です。それよりもあまり血液に出ずに、ただひたすら痛いだけの中途半端なリウマチの方が治りづらいです。私たちの場合は、「予後不良のリウマチ」というような言葉を使わずに「抗CCP抗体陽性=本物のリウマチ」と呼ぶようにしています。
抗CCP抗体の正常数値
本院の正常値:4.5未満
CRP
C反応性蛋白(CRP)は、関節や体内の炎症を表す一般的な項目です。リウマチ患者さんの場合、関節の炎症が強いとCRPの値も高くなります。急性的な炎症が起こると速やかに上昇し、炎症が収束すると速やかに低下しますので、炎症の勢いを反映しています。
CRPの正常数値
本院の正常値:0.30
膠原病そのほかの血液検査
抗核抗体(ANA)
抗核抗体は主にリウマチ以外の自己免疫疾患、膠原病が隠れていないか調べるための検査として用います。
ただし、女性は全く健康な方でも陽性になることが多いので、抗核抗体陽性=膠原病ではありません。特に単位が80倍・160倍・320倍という、倍倍ゲームの単位なので一見数字が非常に高いように見えて驚かれることが多いですが、本当に心配しないといけないのは 640倍以上ぐらいに考えてもらって大丈夫です。
リウマチ以外の膠原病も最初はリウマチのような関節痛で発症し、リウマチと区別がつきにくいことがありますが、頻度的には、リウマチのほうが圧倒的に多いのです。血液検査だけではなく、身体所見など複合的な判断を行います。
MMP-3
MMP-3(マトリックスメタロプロテアーゼ3)は、関節炎の勢いを反映するマーカーです。
通常は、CRPで炎症の評価をします。治療薬の効果によりCRPで炎症の判断ができない場合などで検査をすることがあります。例えば、アクテムラを使用していると痛みや腫れが残っていてもCRPが下がってしまうのでこの検査を参考にします。
肝機能検査 AST ALT LDH など
リウマチ薬には、肝臓で代謝されるものがあり、肝機能の把握が必要です。特にMTXの投与量が上限に近づいてきた場合には数字が上がってくるので 投与量の調節をするために重要です。
気をつけないといけないのは、正常値を少し超えたからといってMTX を中止してしまったり減らしすぎると、急激にリウマチが悪化するケースが多いことです。
ウイルス性肝炎
リウマチ薬により隠れていた肝炎(再活性化)が出現する場合もあるため、注意深く観察します。
腎機能検査
痛み止め薬やリウマチ薬のなかには腎臓で代謝されるものがあり、腎機能の把握を定期的に行います。MTXなどのお薬の副作用などで腎機能が低下することを恐れている患者さんが多いですが、実際にはリウマチのような血管の炎症も伴うような病気をコントロールしないことが大きく 腎臓の機能を低下させることがわかっています。
肺の炎症・感染症
βDグルカン
カビによる肺炎がないかを確認します。
KL6
間質性肺炎や肺の病気がないかを確認します。
そのほか、リウマチの活動期に見られる貧血のチェックなど、赤血球、白血球、血小板など感染症、炎症や薬の影響による副作用を把握します。
血液検査の頻度
本院の目安は以下の通りです。
- 抗リウマチ剤開始後1年間は8週おき
- 1年以上経って安定したら10週おき
- 上記に加え薬剤の変更時など状況に応じて適宜追加
本院ホームページでは、関節リウマチの原因・診断・治療の流れや費用について、ご説明しています。